不明幼虫

Q&A(過去の質問と回答)

その他編

飼育編

 

Q : 5月頃から夕方になると草むらで『ジーーー』と続けて聞こえる鳴き声の主が以前から気になっていました。
親に聞くと「あれはミミズの鳴き声だよ」と言います。本当でしょうか?

A : ミミズの鳴き声という迷信が広く語り継がれているようですが、正体はキリギリスの仲間のクビキリギス
やシブイロカヤキリモドキ、あるいはオケラでしょう。クビキリギスは耳にジーンとくる様な高い鳴き声で、
シブイロカヤキリモドキはよく似ていますが、少し低くしゃがれた鳴き声です。また土の中から低くうめく様な、
所々途切れたりする鳴き声が聞こえてくると、如何にもミミズが鳴いている姿を連想させますが、声の主は
オケラ様です(笑)。 (橋本和幸)

 

Q : この夏、夜の10時を過ぎて、空気がひんやりしだすと、「ピッピ、リーー」と鳴き出す虫がいます。澄んだよく通る声で、
「ピッピ、リーー」と一節ずつ区切って鳴き、あちらこちらから掛け合いのように大合唱になります。辞典で調べてみたので
すが、なんという名前かわかりません。

A : マツムシですね、歌では「チン・チロリン」と形容されていますが、実際に聞くともっと鋭く大きな鳴き声なので、
屋内で飼うのはお勧めできません(笑)。 (橋本和幸)

 

Q : 1週間ほど前から、部屋の中で「キッキッキッキッキッキッ」という鳴き声がします。 マンション3階住まいで、
コオロギなどがいるはず無いのですが。パンッと手を叩いたり音を出すと、鳴き声が止まります。明かりをつけたら
鳴かなくなりました。毎日部屋のあちこちを移動してるのか、鳴く場所が違います。コオロギなのでしょうか?

A : 秋になると部屋の中まで入り込んで、あちこち移動しながら小さな声で「チン・チン・チン・・・」と鳴くのは、
コオロギの仲間のカネタタキです。隙間のある日本家屋ならそのうち自分で出ていきますが、そうでない場合
は出来れば捕獲して外へ逃がしてやってください。もちろん部屋の中にいても害はありません。(橋本和幸)

 

Q : NHKニュースで中国の闘蟋(コオロギ相撲)の全国大会の様子が放映された.大きな顎を左右に拡げ相手を
威嚇する映像はかなりの迫力であった.コオロギの種類は形状,大きさ,鳴き声までも日本のツヅレサセ似だった
が,正しい種名は何であろうか?

A : 「中国宇津蟋蟀志FAUNA OF NINGJIN COUNTY, CHINA」(編著Wu Ji Chuan教授,322頁.)という
中国語の本は「闘蟋は中国古来の,一千年以上の歴史のある文化で,また中国昆虫学の一部門であり・・・」
という序文で始まっています。この中に代表的な闘蟋用コオロギとして、ミツカドコオロギとエンマコオロギのほか
に,ツヅレサセコオロギ、クチナガコオロギの写真が載っています。クチナガというのは名前のように大顎が長く,
闘蟋に適しているので人気があるようです。(井上尚武)

 

Q : 昨日羽化したヒメギスの羽の長さが、後足の膝にかろうじて届くかどうかという長さです。長翅型ならもっと長いはず
なんですが、この場合の羽型は何という名称になるんでしょうか? 中(間)翅型?

A : 私は中翅型(mesopterous)なんて言っていますが、正確には亜長翅型(submacropterous)です。
ちなみにノセヒシバッタは微翅型(micropterous)です。よく見ると翅があります。(市川顕彦)

 

Q : 先日「チチロ」という言葉を聞き、訪ねると「コオロギやがな」と言われました。こういう別名ってあるのでしょうか。

A : 「ちちろむし」とはコオロギ類のことをさしているようですが、元はマツムシの鳴き声の擬声語「チンチロリン」からの
変化で「チンチロリ虫」→「チンチロ虫」→「チチロムシ」となっていった様です。(荒居浩明)

「ちちろむし夜吹く風や寒からし 更ければいとどよはる声かな」 秘蔵抄
「糸つむぐ車の下やちヽろ鳴く」  虚子

(参考 松浦一郎著「鳴く虫の博物誌」文一総合出版)

 

Q : デジカメの接写で昆虫を撮るときのコツをおしえてください。

A : 1、マクロモードにして、撮影距離を説明書にある範囲内にする。もっと拡大したい場合は、
    可能ならクローズアップレンズを装着。出来ない機種ならば、虫眼鏡をレンズ前にあてがう。
  2、カメラが前後、左右にブレないよう、三脚に載せるか、台などにあてがう。
  3、可能な機種なら、絞りを最大にすると、ピントが合う奥行きが広くなる。
  4、液晶モニターを見ながらカメラを前後させると、ピントが合っているかどうかがおおよそ分かる。
  5、接写では、昆虫の体全体にピントが合わないので、「目」に合わせると一番きれいに見える。 (ライデン)

 

Q : キリギリスの幼虫とヤブキリの幼虫の見分け方を教えてください。

A : 一般に太い一本腺が背筋にあるほうがヤブキリ、細い二本の線があるほうがキリギリスといわれています。
 山ヤブキリのほうは体色が若干濃い傾向に偏ると思われます。 (ハタケノウマオイ)

キリギリス幼虫とヤブキリ幼虫

 

Q : なぜ虫は夜によく鳴くのですか? なぜ雄だけ鳴くのですか?

A : 多くの昆虫にとって恐ろしい敵である鳥は耳と目をたよりに獲物を探しますが、その鳥の多くは昼に活動します。
だから虫は夜に鳴いた方が危険が少ないと考えられます。一方で夜は気温が下がり、変温動物である昆虫にとって
必ずしも活動しやすい時間ではありません。ヒメクサキリというキリギリスの仲間は普通夜に鳴きますが、僕の住んで
いる青森県弘前市では、これから寒くなってくると明るい時間に鳴くようになります。
多くの虫で雄が鳴くのはやはり食べられる危険と大きな関係があると考えられています。雄のつくる精子は雌の卵と
比べると大変小さいため、つくるためにかかるコストも非常に小さなものです。だから、子供を沢山つくろうとしたとき
には雄の方が雌よりもずっと沢山の子供を残すことができます。逆にいうと雄はそんなに数がいらないということです。
そのため、雄の雌をめぐる競争は熾烈なもので、鳴くことで自分の居場所を精いっぱいアピールする必要があるのです。
雌には普通そのような危険を冒す必要がありません。これが多くの虫が雄だけ鳴く理由であると考えられています。
しかし、昼にも夜にも鳴く虫、主に昼に鳴く虫、雌も雄も鳴く虫が存在し、そういった例外が何故存在するのかということ
は、多くの虫が何故夜に、そして雄だけ鳴くのかということを考える上でも大切なことだと思います。(岩田健一)

 

Q : ヤブキリは木の上に住んでいる日本産直翅類で唯一土の中に産卵しますが、高い木の上から、わざわざ危険を冒して
まで何故土に卵を生むようになったのでしょうか?

A : 木から降りて産卵するようになったのではなくて、恐らく木に登るようになったのだと思います。何故かというと
この類の多くは木に登らないからです。ヤブキリは大型のキリギリスで卵も驚くほど大型で、このような大きな卵を
植物体(幹や枝、枯れ枝)に産むためには非常に頑丈でしかも太い産卵管が必要ですが、ヤブキリはそんな風に
はなれないのかもしれません。またヤブキリは樹上でも鳴いていますが、特殊なものを除けば結構色んなところ
にいます。若齢幼虫はよく日なたぼっこをしていますし、地表の花の花粉や小昆虫などを食べています。恐らく成虫
は複数回交尾をし、樹上と地表をいったりきたりしながら何回も産卵するんだと思います。つまり、生活史の色んな
段階で地表と植物体上をうまく使い分けるようになった、というのが僕の意見です。(岩田健一)

A : キリギリス科のヤブキリ亜科では、後肢第一ふ節の基部にPlantulaという葉片があって、これが発達している
のがヤブキリ属です。事実上他のヤブキリ亜科はPlantulaが発達していません。これを他のキリギリス科の亜科との
比較で言うと、Plantulaのあるヤブキリ属が子孫的形質があるので、地上から樹上へと進出したことになります。
私は以前ヤブキリが原始的かと思っていましたが、種分化のことを考えるとむしろ進化した(派生的な)群だと思う
ようになってきました。(市川顕彦)

 

Q : 齢数(脱皮回数)は飼育条件や個体差で変わりますか? あるいは種によって決まっていますか?

A : 多くの直翅は環境条件により齡数が変わります。温度、光周期、密度などが影響し、同じ条件でも個体間で
齡数が異なることが普通です。地域集団間で違いがみられることも多く、南で虫が大きかったりするのは遺伝的に
幼虫期間が長く、齡数が大きなためです。直翅は最も少ないものでも4齡はあります。直翅は翅芽の反転を羽化の
2齡前の脱皮で行うので、この場合3齡で反転がおこります。キリギリスの仲間では僕の知っている限り4齡のもの
はいません。同じ環境なら雄より雌の脱皮回数が多いのもいくつかの虫で確認されています。また、齡数は光周期
の影響を受けるものが多く、長日で多くなるのが直翅では一般的ですが、クビキリギスの幼虫休眠などでは逆に短日
で多くなります。また、クビキリギスは長日で飼うと7齡や8齡がでますが、密度を高くするとそのようなものはいなく
なります。(岩田健一)

 

Q : 夏の間土手などで、草にしがみついたまま死んでいるショウリョウバッタを見ることがあります。何かの病気で死んだ
んだと思うんですが、冬虫夏草ではなさそうです。何でしょう?

A : バッタの病気はいくつかの糸状菌やバクテリア、ウイルス、原虫、線虫が知られていますが、多いのは糸状菌
です。天敵を利用した防除の中でも有力視されています。高い所に宿主であるバッタを誘導しそこで死なせるのは
胞子を拡散させやすくするためであると考えられ、馬毛島でトノサマバッタが大発生したときも、大発生を終息させる
一因となったそうです。(岩田健一)

 

Q : クビキリギスやツチイナゴなどの成虫で越冬している虫はどんな生活をしているのでしょうか? 暖かい日には動き
出して何かを食べたりするのでしょうか? どうも冬眠との違いがよく分かりません。

A : 休眠は、好適な環境であるにも関わらず発育が、停止する現象で、昆虫全体では卵から成虫までの全ての
発育段階で見られますが、種ごとには休眠に入ることのできるステージは決まっています(複数の休眠ステージ
を持っているものもいます)。成虫は次の発育段階がないので、成虫の休眠というのは分かりにくいかもしれませ
ん。成虫休眠は卵巣や付属腺などの生殖器官の発育遅延、呼吸量活動量の低下、脂肪体の蓄積等で特徴づけ
られます。成虫休眠中の虫でも、温度が高く、餌があれば動き回り、摂食するものもいます。しかし、卵巣発育が
起こり、産卵することはありません。成虫休眠を持つ虫の多くは日長に反応して休眠に入ります。まだ気温が高い
秋のうちに休眠に入ることで、寒さに弱い卵や幼虫の出現は抑えられます。同じように、卵で休眠する虫は寒さに
弱い幼虫の出現が抑えられます。つまり、休眠には個体自身が耐寒性を持つということと、休眠期以降の寒さに
弱い発育段階で冬を迎えることを防ぎ、生活史を同調させるという大きく2つの意義があることになります。成虫休
眠は、冬の低温で覚める場合と春以降の日の長い条件で覚める場合の2つが有名ですが、飼育条件下ではその
どちらの刺激によっても休眠が覚める虫が多いです。(岩田健一)

 

Q : 毎年ベランダのアップルミント鉢で勝手に累代繁殖しているオンブバッタが、去年11月に一匹孵化し、現在メスの成体に
なって暫く経ちますが、本日オアシスの穴に産卵しました。オンブバッタに単為生殖はあるのでしょうか。

A : バッタやキリギリスも単為生殖します。発生率は種によってさまざまで、イナゴではハネナガ、タイワンハネナガ、
コバネの順で発生率が高く、移動能力との相関が論じられています。ヒメクサキリやクビキリギスも単為生殖します。
トノサマバッタでは数世代繰り返せることが確認されていますし、海外には雌しかいないバッタもいます。
調べれば単為生殖する種類は多いはずです。(岩田健一)

 

Q : 先日ご報告した単為生殖で孵化したオンブバッタは元気です。まだ一匹しか孵化していませんが、他にも孵ったら
それらは全部同じ性で同じ顔しているのでしょうか?

A : 単為生殖個体は「ドリー」のようなクローンではありません。アブラムシの夏世代などをクローンと呼ぶこと
はありますが、オンブバッタもアブラムシも全て減数分裂時に「組換え」が起こっています。同じ親から生まれた
子でも一卵生双生児でない限り身体的特徴が変わるように、同じ母親から単為生殖で生まれた子でも均質では
ありません。ただし、バッタの場合、単為生殖の結果生まれた子の性は全て雌になります(性決定はXO型です)。
単為生殖はあくまで有性生殖であり、出芽等の無性生殖とは異なります。(岩田健一)

 

 

Q : 羽の長さが同じ種類の中で違うという事が直翅類には多いですが、これは直翅類独自の特徴ですか? またそれは
何の為にあるのでしょうか?

A : 翅型多型は直翅目で顕著で多くの研究が行われていますが、半翅目、アザミウマ目、直翅目、カマキリ目、
鱗翅目、甲虫目等多くの虫で知られています。翅型多型の生態的意義は比較的明確であると考えられ、長翅型は
移動することで分散や宿主転換を行い、短翅型は移動力と引き換えに産卵数を増加させるという戦略の違いがある
と考えられます。長翅型は移動前には卵巣を発達させないのが普通でそれゆえに産卵開始時期も同時期に羽化し
た短翅型よりも遅くなります。コオロギでは長翅型の翅を羽化後に取り除くと短翅型よりも沢山卵を産むことが知ら
れています。(岩田健一)

 

Q : オンブバッタが密集して生息するところでは良く長翅型を見ます。群衆相を持つタイプのバッタと同じように仲間との
接触が関係しているのでしょうか?また寒い地方では長翅型がよく出るような気がしますが・・・

A : 以前、オンブバッタを25℃と30℃の16時間明期、12時間明期の4実験区で飼育したことがありますが、長日、
高温で長翅型が出現しやすいという結果を得ました。密度は厳密に同じにはしていませんが、少なくとも長日、高温
のほうをすごく高密度にしたということはありません。こういう反応はコオロギやコバネイナゴと同じですが、これらの
種では密度の影響も受けないわけではありません(しかし、短日低温では高密度にしても長翅型は出ないので、
温度と日長がより重要なものが多い)。
寒いところで長翅型が出やすいというのも一般的ではありません。普通は逆です。僕がその傾向を明確に感じ取れる
のは高標高地のハラヒシバッタとヒメギスですがこれも、低地から集まってきている可能性を否定はできません。
キリギリスは北海道のハネナガキリギリスは長翅ですが、オキナワキリギリスも長翅で両者は色彩も似ています。
コバネイナゴは短翅〜長翅まで連続した翅型多型が観察でき、短翅もはばたきますが、屋上に飛来するようなもの
は完全な長翅型で移動分散という観点からみるとこれらの連続多型は、翅型2型としてとらえられるべきものである
ことが判ります。オンブバッタも蛾のように飛ぶ雌をみたことがありますが完全に長翅型で卵巣も未発達でした。
(岩田健一)

 

Q : 今年の夏にスズムシを飼育していたのですが、10月24日に幼虫が1匹孵化しました。 越冬する昆虫の卵は
一定の期間低温の状態を経過しないと孵化しないものと思っていたのですが・・・・

A : 直翅目昆虫の卵休眠は温度に対する産卵後の感受性がある場合が多く、暖かい室内では一部が孵化してくる
ことは珍しくありません。トノサマバッタとマダラスズは暖地では2化が基本で、2化目の親は短日に反応して休眠
しやすい卵を産みますが30℃では多くが休眠せずに孵化してきます。また、年1化の生活史を営む種でも25℃位
の温度では数パーセントが休眠せず孵化してくる場合がほとんどです。また、一度休眠に入った後25℃のような高
い温度に置きっぱなしにしても、100日以上かけてほとんど全ての卵が孵化する場合もキリギリスやコオロギの仲
間では多いのです(ただし真のキリギリスの仲間の最終休眠は例外です。飼育教室のキリギリスの生活史をご参
照ください。またバッタも多くが死んでしまうものが多いように思います)。冬休眠の消去は多くの場合低温で高温よ
りも早く達成されます。この、形態変化を伴わない生理的な過程は休眠発育と呼ばれます。カイコの休眠卵は25℃
ではほとんど孵化できずに死んでしまいます。昆虫は変温動物なので形態発育の限界温度があります。それは温帯
の多くの昆虫では10℃位なのですが、休眠発育はそれより少し低い温度でもっとも早くなる虫が多いのです。形態
発育の起こらない温度でしか休眠発育が起こらない虫もいないわけではないのですが、ほとんどの場合は高い温度
でも休眠発育は起こります。カイコのような高い温度での孵化がほとんど見られない虫でも休眠消去の兆しは観察で
きるらしく、カイコの孵化が高温で起こらないのは休眠発育が起こらないためではなく、遅いためにその前に胚が力尽
きるのだと考える研究者もいます。 (岩田健一)

 

 

 

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